7月16日午前、滋賀県・大津市民会館で「第3回あすのば自治体シンポジウム」を開催しました。会場・オンラインをあわせて50人が参加しました。
シンポジウムでは、子どもの貧困解消に向けて、困窮する子ども・若者やその家族の実態を踏まえ、自治体による「公助」とNPOなどによる「共助」の課題とあるべき姿などについて、シンポジストが率直に意見を述べ、白熱した議論が交わされました。
基調講演は、「子どもの声を大切にしたまちづくり―尼崎市の事例から」と題し、稲村和美さん(前兵庫県尼崎市長)が登壇しました。
稲村さんは、
「尼崎市は、厳しい財政でしたが、『ピンチはチャンス』と捉えて、さまざまな分野で官民連携を進めました。
とくに力を入れたのは、大学跡地に市民の学びや子どもの育ちを総合的に支える拠点として開設した『あまがさき・ひと咲きプラザ』。
教育・福祉・保健部門などの連携を強化し、組織の切れ目・隙間をなくすような体制を整備するとともに、困難を抱える子どもの情報の一元化、ユースワークを推進するセンターなどハード面・ソフト面で改革を進めました。再来年には、市が児童相談所を開設予定で、対処的アプローチと予防的アプローチが重層する支援体制を目指しています。
さらに、2021年には、体罰やいじめ、虐待など子どもの人権が侵害される事象について調査、勧告などを行う独立機関として『子どものための権利擁護委員会』を設置しました。
『組織の縦割りを超えて、子どもをまんなかに』と考えるうちに職員の意識改革にもつながっていきました。
今後も、さらに官民の協働で、アウトリーチなど含めて困難な子どもに寄り添う体制整備が進むことを願い、私自身も一緒にとりくんでいきたいと思っています」
と述べました。
続いて、パネルディスカッション「子どもの貧困解消へ-自治体の役割-」には、
市本貴志さん(奈良県天理市議会議員)、徳丸ゆき子さん(認定NPO法人CPAO理事長)と稲村さんがパネリストとして登壇。
コーディネーターは石田賀奈子さん(立命館大学教授)が務めました。
市本さんは、こども食堂や食料支援などの活動にも力を入れ、行政や社会福祉協議会などと連携した支援につなげてきた実践とそこから見えた課題などについて発言しました。
徳丸さんは、連日連夜、困窮する子ども・若者や保護者たちに向き合う現実の厳しさを踏まえ、さらに大幅な行政の体制強化が必要であることなどを述べました。
【参加者の感想】
○キレイごとではない議論、とても心を打たれました。
○子どもの貧困には対処療法ではなく、根本的な対策と人権保障が必要です。地域にあるNPOはがんばって取り組んでいますが、財政的にとても厳しい状況です。ノウハウも含め、支援が必要です。
○さまざまな視点から現状を考えるよい機会になりました。子どもたちが「自分も生きていい」と思えるように、できることをしていきたいです。
【メディア掲載】
京都新聞(2024年7月17日)
『「給食がないと夜まで何も食べられない」大津市で子どもの貧困考えるフォーラム』
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1292372
(2024年8月7日確認)