子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば

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2025.03.13|

開催報告【子どもの貧困対策 中国フォーラム】

2月14日(金)午後、「子どもの貧困対策 中国フォーラム」を岡山県と共催し、きらめきプラザ(岡山市)で開催しました。会場・オンラインをあわせて153人が参加しました。


小河光治・あすのば代表理事の開会あいさつに続いて、「あすのば給付金受給者調査 中国地区在住者集計の発表」を三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の平安乃研究員が行いました。 また、あすのば子ども・若者委員の花村拓己さんと川村空さんが、 調査の自由記述が記入された中国地区の子ども・若者や保護者の切実な「生の声」を紹介しました。

 

基調講演は、こども家庭庁支援局家庭福祉課企画調整官の胡内敦司さんが「地域におけるこども・子育て支援を考える」をテーマに講演いただきました。
胡内さんは、「課題の解決を自治体だけや支援団体だけでそれぞれが活動するのではなく、自治体や支援団体が連携・協働し、点が線に、線が面になれば、困窮する子どもや家庭を見つけやすくなり、サポートしやすくなる」と話された上で、困難を抱えた子ども・若者の意見反映の推進事業、ひとり親家庭などへの子どもの食支援事業、地域の子どもの生活支援を強化する事業、子どもの生活・学習を支援事業、子どもの見守り強化事業、子どもの未来国民応援運動など、各地で活用できる国のさまざまな施策について、ていねいに紹介いただきました。「大事なことは、支援団体をはじめとする地域で活動されている方々と自治体との連携・協働です。現場で活動をされている方々が気になる子どもや家庭を発見した場合、自分たちで支援できることには限界があり、難しい課題や状況に直面する機会もあると思います。そういったときに自治体にバックアップしてもらいながら、あるいは、自治体と一緒に活動するなど、地域のみんなで解決していくことが、今後より一層重要となってきます。」と官民の連携・協働を強調されました。

パネルディスカッション「子どもの貧困の解消に向けた支援の今とこれから」では、パネラーとして、社会福祉法人倉吉東福祉会母子生活支援施設「倉明園」施設長の田中恵子さん、特定非営利活動法人「しまね子ども支援プロジェクト」副理事長の樋口和広さん、一般社団法人「こどもソーシャルワークセンターつばさ「代表理事の紀奈那さん、特定非営利活動法人「とりで」理事長の金本秀韓さん、特定非営利活動法人「山口せわやきネットワーク・こども明日花プロジェクト」代表理事の児玉頼幸さんが登壇。

コーディネーターは、川崎医療福祉大学医療福祉学部講師の直島克樹さんが務めました。

 

金本秀韓さんは、「活動の対象の年齢は10代後半が多く、高校卒業したら就職・自立にはいかない場合もある。20代になっても関係を切れずに何らかの形で関わり続けられるような体制を作らないといけないと思っている。行政は、10代後半から20代の若者たちをサポートできるような事業の予算化が既にしていただいているので、民間の実行団体としては実績を積んで、しっかり継続して当たり前に10代後半以降の若者たちをサポートしていける体制を作っていきたい」と話されました。

 

田中恵子さんは、「施設の利用者や様々な過酷な状況の中で支援を必要とする人達は、本当に勇気を振り絞って行政などに相談に行く。退所後のアフターケアで子どもたちが大人になって相談に行ったときにちょっと傷ついて帰ってしまうことがある。それは私たち支援者も同じだが、社会的養護施設や相談機関である行政関係機関など、みんなが一緒にもっと社会全体で柔軟に対応していくためのスキルアップなど、一緒に切磋琢磨していける仕組みづくりがまず必要なのではないかと思う」と述べました。

 

樋口和広さんは、「団体のスローガンに『子どもが貧困のスパイラルを抜け出すために』、『みんなが支える世の中になるために』の2つを掲げている。周囲がどこまで子どもの貧困問題を自分事ととして考えてくれる世の中になるかが大事。役場の皆さんも実情を知ると自分事と思ってくださる方も少なくない。自分の声としては言えない方の声をどう『見える化』してお届けするかが私たちの役割で、それを食支援とセットでやっていかないと多分世の中変わらないんだろうなと思っている」と話されました。

 

紀奈那さんは、「岡山はやっと子ども食堂が増えてきて、小学生が集える場所が増えてきた。一方で中学生・高校生世代の子どもたちの居場所、ふらっと行ける場所が作られていないと感じている。その世代の子たちが集えるような場所をもっと作りたい。今の団体の枠組みでは高校3年生までしかサポートできないが、卒業すると社会人になっても専門学校・大学に行っても大変な時期が続くこともあるので、そこの年代にもサポートをできるような体制を作っていきたい」と述べました。

 

児玉頼幸さんは、「山口市内と県内でも食品などの提供はするが、支援を行き渡らせたいときに私たちだけではできない。仲間を増やしていくということがすごい大事だ。子ども食堂が県内でもかなり増えており、食事提供だけではなく居場所を作って見守りをしていることが最近増えてきている。中間支援団体としても、今後も子ども食堂を応援して居場所を各地に増やしていきたい」と話されていました。

 

討論のまとめとして直島克樹さんは、「困難を抱えた子どもたちは、『相談のしにくさ』や『相談して傷ついてしまった』と訴えることが多々ある。深刻なことは、子どもたちがこのように感じていることを相談を受ける側にその自覚がないことではないか。こうしたことから、子どもたち自身が『私は甘えているんだ』と無意識のうちに刷り込まれてしまう。さまざまな価値観が世の中にはあるが、困難を抱えた子どもたちがそうした価値観に晒され、大きな影響を受けているということが、あすのば調査結果やパネリストのみなさんの現場での取り組みの中から見えている。その問題点を指摘し、抗い、社会のみなさんに考え方を変えてもらえる取り組みが重要だ。そうすれば、子どもたちが『生きてていいんだ』、『自分ってこういうことができるんだ』と思える社会を作っていけるのではないかと思う」と述べました。

 

全体会の最後には、助成いただいている公益財団法人キリン福祉財団 参与・事業部長の大島宏之さんに、ごあいさつをいただきました。

 

分科会は一般社団法人こどもソーシャルワークセンターつばさ代表理事の紀奈那さんがコーディネーターを務めました。「ヤングケアラー、官民連携、居場所づくり、親への支援、食支援、人材育成」の6つのテーマに分かれ、パネルディスカッションでご登壇いただいた方も含め、 会場参加の方全員でディスカッションしました。

行政職員や民間支援団体、議員や一般市民、大学生など さまざまな立場からわかること、考えたことを話し合う意見交換の場になりました。

 


【参加者の感想】

○子どもの貧困に関する国の方針、市町村の動き、地域の実践といった幅広いレベルにおける支援とそのつながりを学ぶことができました。

○民間支援団体で有効に活用できるよう、幅広く用意されている国の支援制度を周知していくことが必要だと感じました。

○子どもの貧困の背景にはさまざまな問題があり、子どもや親だけでなくその地域、社会なども大いに影響しているため、一つの機関だけでなく、多機関が連携しあらゆる支援や体制づくりを展開していく必要があることがよくわかりました。

○繋がるための工夫について、「待っているだけでは上手く繋がらない」との言葉が印象的でした。自身の活動内容について積極的に広報活動をしていきたいと改めて思いました。


【子どもの貧困対策 中国フォーラム】
日 時:2025年2月14日 (金) 12時30分~16時30分
場 所:きらめきプラザ301会議室 (岡山市北区南方2-13-1 岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館)
主 催:公益財団法人あすのば
共 催:岡山県、社会福祉法人岡山県社会福祉協議会
後 援:こども家庭庁、鳥取県、島根県、広島県、山口県、岡山市、岡山市教育委員会、山陽新聞社

協 力:KOTOMO基金/特定非営利活動法人岡山NPOセンター、一般社団法人こどもソーシャルワークセンターつばさ、特定非営利活動法人ワーカーズコープ
助 成:公益財団法人キリン福祉財団
参加者:計153人(うち会場参加者91人・オンライン参加者62人)

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