子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば

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2021.12.24|

社会的養護経験者アンケート報告書(本人票・速報値分)

 

 あすのばでは、入学・新生活応援給付金をお届けした児童養護施設や里親など社会的養護経験者にアンケート調査を実施しました。

 

アンケート調査の背景・主旨について

 

 2020年度の虐待相談対応件数は20万5,029件(速報値)で、過去最多を更新しました。国の福祉行政報告例によると、2019年度に一時保護につながった件数は5万2,702件(うち虐待は3万42件)。そこから、施設や里親につながった件数が1万876件(同5,982件)だったことから、多くは在宅・帰宅することになっていることが分かります。また、退所した子ども・若者の約40%が家庭復帰しているデータもあります。

 

 あすのばでは、住民税非課税・生活保護世帯とともに児童養護施設や里親など社会的養護のもとから退所する子ども・若者にも給付金を届けてきました。延べ1,179人にお届けし、親や家族を頼ることのできない後ろ盾のなさはさることながら、家庭復帰する人も経済的な困難性や家族の世話を担うような「円満」と言えない実情も垣間見てきました。「延べ」人数としたのも、家庭に戻った後に再度、施設・里親のもとで暮らすことになり2回給付を行った人がいたからです。

 

 つまり、社会的養護を経験する“前”も“後”も支援が必要とされる中、子どもの貧困対策や子ども・若者支援領域からの連携や、包括的に伴走できるかが大きな課題となりつつあります。
 そこで、まずは実際に給付金を届けた人たちが現在どのような生活を送っているのだろう、声や想いを聴いて今後の事業や対策の改善・充実につなげたい。そのような想いから、あすのばでは初めて給付金を届けた社会的養護経験者へアンケートをお送りしました。対象は高校~大学生世代の本人票1,106人、および家庭復帰した小学~高校生世代の保護者票164人で、退所後の住所が分からない人には施設・里親に転送ご協力のお願いをしました。

 

 今回のアンケートに際し、給付金を届けてから一番長くて5年程度でも本人票の31.1%(1,106人中344人)、保護者票の23.0%(164人中37人)は現住所不明などで送付できませんでした。まずはつながり続けることの難しさと大切さについて考えさせられる一幕でした。本人の不義理などでは決してなく、それだけ置かれる環境が安定しづらいことの裏返しだと感じています。また、その中でも4人がすでにお亡くなりになっており、とても胸が痛みました。

 

 施設・里親での生活に関する質問(16ページ~)では、一時保護につながった後に家庭に戻り結果的に社会的養護へとつながったとみられる人、家庭復帰後に再度、施設・里親につながったとみられる人もいました。およそ半数が最後に生活していた施設・里親の市町村と異なる市町村に現在住んでいることも含め、あすのばのような地域や社会全体で活動する団体・支援者がいかにつながり、連携や包括的な伴走の在り方も考えさせられる結果でした。また、中学卒業を機に家庭復帰した人は後の高校卒業や大学進学、就職の際に社会的養護を経験した人だけど社会的養護の枠組みから外れてその支援が受けられなくなることにも改めて気づかされました。今後は社会的養護を経験する“前・後”という支援枠組み自体から、問い直すことも必要かもしれません。

 

 今回は本人票の速報値分までの公表に至りましたが、家庭復帰をした保護者票24人も貴重な生活の状況や声をお届けいただきました。聴き取り協力の承諾を得られた人へ詳しくお話をうかがうことを視野に入れ、保護者票の結果は後日あらためて公表することを検討しています。

 

社会的養護経験者アンケート報告書(本人票・速報値分)

 

 

 

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