子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば

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2024.10.31|

開催報告【子どもの貧困対策 東北フォーラム】

10月25日(金)午後、「子どもの貧困対策 東北フォーラム」を宮城県と共催し、エルパーク仙台で開催しました。
会場・オンラインをあわせて90人が参加しました。


小河光治・あすのば代表理事の開会あいさつに続いて、基調講演は、弘前大学大学院教育学研究科教授の吉田美穂さんが「地域で向き合う子どもの貧困~教育と福祉をつなぐ青森の試み~」をテーマに講演いただきました。

 

吉田教授は、「貧困問題は、『東京よりは、青森は落ち着いてますよね』と言われることもあるが、子どもの生活実態調査の青森県のデータからは、決して青森の状況が楽観していいものでないことがわかる。青森での貧困の具体的な姿が見えてなくて共有できてないため、地域の見えない子どもの貧困を見える形にしていきたいと思った」とお話されました。

 

そのために、教育と福祉をつなぐプロジェクトとして、弘前大学「子どもの貧困」をめぐる地域・学校・自治体の連携・協働推進プロジェクト(2023年に「子どもの貧困」をめぐる協働プロジェクトに改称)が発足。講演では、プロジェクトで実施された実態調査やインタビュー調査で見えた事例を紹介いただきました。

 

校内研修や男女共同参画のワークショップ、福祉行政のインターンシップでのワークなどで、事例を取り上げてみんなで考えてもらう活動も紹介。「子どもの表面的な様子だけを見ると怠惰に見えても、家庭が経済的に困っているかもしれない、ヤングケアラーなのかもしれない、という意識をもって接することや、いろいろな専門家が連携して対応することが大切」などと述べました。

 

 

 

続いて、あすのば6千人調査の東北地区集計結果を三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の喜多下悠貴さんが発表しました。あわせて、本調査の自由記述欄に寄せられた東北在住者からの声を一部紹介しました。

 

 

その後のパネルディスカッション「先駆的事例に学ぶ子どもの貧困対策」では、パネラーとして、寺子屋方丈舎理事長の江川和弥さん、山形県ひとり親家庭応援センター相談員の川又英子さん、TEDIC支援員の千葉茉亜莉さん、秋田たすけあいネットあゆむ理事長の保坂ひろみさん、インクルいわて理事長の山屋理恵さんが登壇。コーディネーターは、アスイク代表理事の大橋雄介さんが務めました。

 

江川さんは、「若者たちが元気と自信を持って地域に残っているのかということが大事で、消防団に入っているのは通信制高校や地元の実業高校を出た子どもたちだったりする。彼らが自信を持って地域に残れるということに、もっと地域で共生できる投資をすべきだ」などと述べました。

 

川又さんは、「一番力を入れてるのが相談支援で、山形の集中豪雨では特に過疎地域の被害が大きく、今も電車が動かないが、通学は保護者が送迎しなくてはいけない。ガソリンの高騰しているときに、部活なども全て送迎している現状がある」など相談事例について発言しました。

 

千葉さんは、「TEDIC発足のきっかけは、東日本大震災であり『震災があって救われた』と話している子など、震災をきっかけに見えづらかった苦しい状況が見えてきた。地域に根付いた活動を続け、地域のみんなで子どもを支える地域にしていくために活動している」などと述べました。

 

保坂さんは、「フードバンクを皮切りに居住者支援など13事業を実施している。フリースクールは、1日500円の利用料が払えないために使えないということがないように放課後等デイサービスも展開し、住民税非課税世帯は、送迎付きで無料で通えるようにした」など支援現場の視点で発言しました。

 

山屋さんは、「家族の形に関わらず、誰もが生き生きと暮らしていける社会の実現をビジョンに、当事者支援と一緒に地域づくりを行っている。当事者が地域に出たときに、排除や差別をされては力を落としてしまう。地域の人たちの意識を変える街づくりを進めている」などと述べました。

 

大橋さんは、「子ども・若者たちが抱える多様な生きづらさに関わる複合的な課題への取り組みをしている。その子の力だけでは状況を変えられないため、複合的なアプローチを大切にし、学習・生活支援事業などは自治体との協働も大事だ」などと発言しました。

 

その後、「子どもの貧困対策法施行10年で、子どもの貧困を取り巻く状況はどう変わったか」、「この先10年で、どんなことに取り組んでいくべきか」をテーマに活発な議論が続きました。

 

全体会の最後には、助成いただいている公益財団法人キリン福祉財団常務理事・事務局長の年代明広さんに、ごあいさつをいただきました。

 

分科会は、アスイク職員の三浦侑太さんがコーディネーターを務めました。グループごとに「今日一番勉強になったこと」、「東北ならではの課題」、「10年後に向けて取り組むべきこと」などについて、さまざまな意見交換の場になりました。

 


【参加者の感想】
〇東北で活動する方たちの活動を具体的に知ることが出来た。基調講演で教育と福祉がつながることの大切さを強く感じた。自団体の課題を洗い出す機会になったこと、またその解決のためのヒントを持ち帰れたことが成果だった。
〇子どもの貧困問題はより複雑、困難なケースが増えているように感じています。支援が必要な子どもや家庭を行政につなぎたいと思っても、本人が希望せず解決に至らないケースが過去にありました。最近増えている闇バイトは貧困に起因しており、低年齢化していることも気にかかっています。誰かが抱えたままではなく、地域で助けあう仕組み作りに、各地で取り組めたらと思います。
〇支援者を支える仕組みをどう強化するか、地域住民のひとびとに子どもの貧困を身近な課題と感じていただくためにどうすればいいのか、これからもみなさんと共に考えながら実践していきたいと思います。


【子どもの貧困対策 東北フォーラム】
日 時:2024年10月25日(金)13時~17時
場 所:エル・パーク仙台 スタジオホール (仙台市青葉区一番町4-11-1)
主 催:公益財団法人あすのば
共 催:宮城県
後 援:こども家庭庁、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、

    一般財団法人仙台こども財団
協 力:特定非営利活動法人アスイク
助 成:公益財団法人キリン福祉財団
参加者:計90人(うち会場参加者42人・オンライン参加者48人)

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